リアルワールドデータ(RWD)の新たな可能性 電子カルテとDPC、両データで見る新しい医療インサイト MDV/TXP Medical共催 無料オンラインセミナー

コラム

リアルワールドデータとは?特徴や活用方法を解説 #002

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高齢化社会にともない増加する医療費を適正化するために、今「リアルワールドデータ」に注目が集まっています。
リアルワールドデータは、実臨床から得られるデータを収集・分析したものです。医療機関や自治体でリアルワールドデータを活用することで、医療の質向上や病院経営の健全化に役立ちます。

この記事では、リアルワールドデータについて解説します。
より良い医療の提供を目指すためにも、ぜひ新薬開発、研究や病院運営の領域でリアルワールドデータの活用をご検討ください


リアルワールドデータとは

ビッグデータとは何か?定義や活用方法を解説

そもそも、リアルワールドデータ(RWD)とはどのような情報のことを指すのでしょうか。
まずは、リアルワールドデータの概要について紹介します。

リアルワールドデータは医療のビッグデータ

リアルワールドデータは、調剤レセプトデータや保険者データ、電子カルテデータなど、臨床現場で得られる診療行為に基づく情報を集めた、医療ビッグデータのことです。

複数の疾患を併発している患者や診断名がついていないような症状もすべて記録されており、原則研究以外の目的で作成されています。
詳細な症状や調剤履歴が記録されている一方で、患者名は匿名化されているため、プライバシーを保護しつつより詳細な医療データを得られる仕組みになっています。

ただし、研究目的のために作成されたデータではないため、信頼性が確保される手法で集められたデータとは異なる点に注意が必要です。
不完全で偏りのあるデータも含まれており、医療統計目的の研究で取り扱うことには向かないデータだと言えるでしょう。

リアルワールドデータの種類

現在、複数の機関がリアルワールドデータを取り扱っています。
その代表例として挙げられるのが、以下のようなサービスです。

  • NDB(ナショナルデータベース)
    厚生労働省が提供する、公益目的のリアルワールドデータ。データの提供は行政機関や大学、研究をする独立行政法人、国管轄の公益法人や国の行政機関などに限られる。
  • MID-NET
    全国23の大病院から電子カルテなどを集めた、製造販売後の調査、もしくは公益性の高い研究のために用いられるリアルワールドデータ。提供は、厚生労働省が開発要請をした医薬品についての実態調査、国や自治体、独立行政法人などの公的研究費による研究に限られる。

上記のように、公的機関が運営するリアルワールドデータの情報提供を受けるためには、非常に高いハードルをクリアする必要があります。
さらに、データの提供を受けるにはセキュリティが確保された専用部屋や膨大なデータを扱うサーバーの設置、高額な分析環境の用意が求められていました。

したがって、一般的な医療機関がリアルワールドデータの情報を手に入れることは難しいとされていました。
しかし近年は、先述した公的機関以外にも、民間でリアルワールドデータを活用したサービスが見られるようになってきています。

民間企業では、独自に契約した医療機関や自治体と連携し、診療データなどを提供してもらうことで、リアルワールドデータを構築しています。
提出された情報は、匿名化技術によって個人情報以外の情報を抽出されるため、企業はプライバシーを保護しながらデータを蓄積することが可能です。

こういった民間のサービスであれば、今までリアルワールドデータの利用ができなかった医療機関や製薬企業でも、情報提供が受けられます。
必要に応じて分析レポートなどの作成ができるため、さらなる医療の質の向上や病院経営の健全化に役立つでしょう。

リアルワールドデータの目的

医療領域で大きな効果を発揮してくれるリアルワールドデータですが、そもそもどういった目的で活用されているのでしょうか。
ここでは、医療データを二次利用する目的について解説します。

1.製薬会社における新薬開発の効率化

リアルワールドデータがもっとも活かされるのは、製薬会社における開発領域です。
製薬研究の段階では、リアルワールドデータを用いて参入テーマのデータベースを参照することで、リスクファクターを分析。

さらに開発に進んだ際も、リアルワールドデータを用いれば、エビデンスの増加や開発プロセスの効率化、マーケティング手法の策定などに役立ちます。
またリアルワールドデータは、治験段階にも大きなメリットをもたらしてくれます。従来の治験手法では、「被験薬群」と「対照群」双方の患者が必要でした。

双方の結果を比べ有効性や安全性を比較する比較対照試験は、時間もコストもかかる非効率的な手法だといえるでしょう。
対してリアルワールドデータを活用できれば、対照群をデータで代替することが可能です。

治験の際は「被験薬群」の患者だけを集めればよくなるため、治験に費やす時間もコストも大幅に減少させられるでしょう。

この方法であれば、難病や希少疾患など患者が限られているケースでも効率よく新薬開発が可能になります。

2.新薬市販後調査の迅速化

リアルワールドデータは、新薬開発段階だけではなく市販後調査の際も役立ちます。
背景因子を豊富に含んだリアルワールドデータを使用すれば、売上データだけではわからない潜在的な情報を読み取ることが可能です。

患者数や検査値、併発疾患などがわかるため、自社の課題の発見や今後のマーケティング戦略の作成の手助けをしてくれるでしょう。
こういった市販後調査を自社で行おうとすると、膨大なコストと時間がかかります。リアルワールドデータを活用できれば、迅速かつ低コストで調査・分析が叶うでしょう。

3.医療の質の向上・病院運営の健全化

リアルワールドデータの恩恵が受けられるのは、決して製薬会社だけではありません。
医療機関にとっても、リアルワールドデータはメリットが豊富です。

リアルワールドデータを活用することで、院内の多剤併用患者の可視化、診療効果の数値化など、さまざまな分析をすることが可能となります。
より医療の質を向上させるための施策や医療費の適正化、病院経営方針の改善策の考案など、複数の領域で役立ってくれるでしょう。

このように医療機関は、リアルワールドデータの提供だけではなく、データを用いてより良い医療の提供に努めることが大切です。

4.希少疾患・難病対策

難病や希少疾患は、患者数が少なく発病機構が明らかになっていません。
そのためせっかく医療機関を受診しても、医薬品の開発が遅れていたり疾患の把握すらされていなかったりと、十分な治療を受けられないケースが多いです。

リアルワールドデータにこういった難病の情報を提供して共有することで、医療機関や自治体の難病患者データの精度向上に役立ちます。
よりリアルワールドデータが普及していけば、今まで見逃されていた希少疾患や難病の患者を取りこぼすことなく、適切な治療を提供できるようになるのです。

臨床試験とリアルワールドデータの違い

患者の情報を集めたデータベースは、決してリアルワールドデータだけではありません。
臨床試験データも、実際の患者の症例を集めて作成されたものです。

しかし、臨床試験データとリアルワールドデータは、全く異なるものであるため区別して認識することが大切です。
ここでは、少しわかりにくい臨床試験とリアルワールドデータ違いを見ていきましょう。

臨床試験の特徴

大前提として、臨床試験のデータは実施計画に基づいて「実験的に集められたデータ」であることなどを理解しておきましょう。
不特定多数の集団ではなく、「基準を満たした症例を持つ患者・集団」に対して試験をしたときのデータのみが集められています。

おもに、特定の有効性や安全性を検証することが目的で集められ治験実施の際に守るべきルールであるGCPおよび各種ガイドラインに沿った対象・手法でデータを収集している点が特徴的です。

リアルワールドデータの特徴

対してリアルワールドデータは、日常診療の中で集められたデータである点が大きな特徴です。
ちなみに、リアルワールドデータとして収集されるデータとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 電子カルテ
  • DPCデータ
  • レセプト
  • 患者登録・レジストリ
  • ウェアラブルや在宅機器など、患者から発生するデータ など

リアルワールドデータの活用例

最後に、リアルワールドデータの活用例について紹介します。

1.薬剤の処方実態を分析したい

販売している薬剤の処方実態を知りたいというご要望がある、製薬会社A社。全体の販売数は把握しているものの、患者単位のデータや併用薬剤のデータがなかったため、処方実態を知りたいとリアルワールドデータを活用しました。

その結果、コストと時間を最小限に抑えて新規・継続患者を分析でき、切り替えや処方中止の情報などを把握できました。
適応疾患別の患者数や処方量もわかり、分析したデータは自社の今後の課題を洗い出すことに役立てられています。

2.新薬の開発時に市場規模を把握したい

これから新薬を開発したいと希望する製薬会社B社。
参入領域の疾患や投薬の傾向、処置をした患者の数を知りたいと、リアルワールドデータを活用しました。

今まで患者単位で投薬や処置を把握できませんでしたが、リアルワールドデータでは患者数や処置の内容だけではなく、性別や年代の分布も判明します。

より詳細な新規参入検討の参考資料として大いに役立ちました。

リアルワールドデータについてよくある質問

質問1:リアルワールドデータにはどんなデータが含まれるのでしょうか?

調剤レセプトデータや保険者データ、電子カルテデータなど、臨床現場で得られる診療行為に基づく情報が含まれます。

質問2:リアルワールドデータにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

医療データの二次利用が可能となり、製薬会社における新薬開発の効率化や新薬市販後調査の迅速化、医療の質の向上・病院運営の健全化、希少疾患・難病対策などを目的としてデータの活用を検討することができます。

質問3:リアルワールドデータにはどんな種類があるのでしょうか?

厚生労働省が提供する、公益目的のNDB(ナショナルデータベース)、全国23の大病院から電子カルテなどを集めた、製造販売後の調査、もしくは公益性の高い研究を目的としたMID-NET、民間企業においても、独自に契約した医療機関や自治体と連携し、診療データなどを提供してもらうことで、リアルワールドデータの構築が可能です。

質問4:リアルワールドデータの解析時間を改善する方法はあるのでしょうか?

データ容量としては大規模になりやすい傾向があるため、解析環境の精査や、データセットの事前加工なので、解析しやすいカラムへの変更も有効です。

リアルワールドデータは製薬・治療領域で活躍する!

リアルワールドデータは、臨床現場で得られる診療行為に基づく情報を集めた医療ビッグデータのことです。
薬剤の処方状況や治験を行う製薬領域ではもちろん、医療機関のサービス向上や運営の健全化にも役立つリアルワールドデータは、今後ますます活用されていくことでしょう。

メディカル・データ・ビジョン株式会社では、リアルワールドデータを活用したサービスを多数提供しております。
薬剤の処方実態の把握やリスク評価に関わる各指標の収集といったデータの活用でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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