ペイシェントジャーニーとは?意味や必要性、マップを作るメリットを解説 #019
2022.08.04
2024.05.10
ペイシェントジャーニーとは、どのような意味かご存じでしょうか。言葉を耳にしたことはあっても、意味や必要性、活用方法までは具体的に知らない方もいるでしょう。
この記事では、ペイシェントジャーニーの意味や必要性のほか、マーケティングにつながる理由について解説しています。また、ペイシェントジャーニーマップを作るメリットもまとめているので、ぜひご一読ください。
目次
ペイシェントジャーニーとは
ペイシェントジャーニーとは、日本語に直訳すると「患者の旅」と言う意味です。
患者が病気を認知し、医療機関で診断・治療を進めていくプロセスで、どのように感じ・考え・行動するのかといった全体像を把握するためのツールを指します。
ペイシェントジャーニーは、以下の5つの段階に分けられます。
- 認知
- 情報収集
- 受診・診断
- 治療
- 支援
ペイシェントジャーニーは、患者が発病して認知するところから始まります。患者は自身の症状をインターネットや書籍で調べるほか、家族や知人にも相談して情報を収集。その後、自身が収集した情報を基に、症状に合致する医療機関を受診します。
医療機関を受診後は、医療従事者による問診や診察、検査を受けて、その結果から医師が診断します。医師は患者に病名および治療方法を伝え、患者の同意を得て治療を開始。治療後は経過観察し、治療の評価や説明、継続的なフォローをするという一連の流れです。
ペイシェントジャーニーの5ステップ
前述したように、ペイシェントジャーニーは、「認知」「情報収集」「受診・診断」「治療」「フォロー」の5段階に分けられます。
以下では、ペイシェントジャーニーの5段階と、それぞれの段階の患者の心情について、さらに深掘りしています。
①認知
ペイシェントジャーニーの始まりは病気を認知するところからです。患者が病気を認知する方法には、以下の2つが挙げられます。
- 症状がある
- 健康診断で異常が発覚する
違和感や痛みなどの症状があり病気に気づく場合と、健康診断を受けた際に異常が発覚する2パターンがあります。患者は病気について詳しく知らず、不安を抱えています。
②情報収集
病気を認知したあと、患者は情報収集をします。情報収集の方法は、おもに以下4つです。
- インターネット
- 書籍
- ブログ
- SNS
患者は自身の症状に関連する病名や病院を調べるために、インターネット検索をしたり書籍を探したりします。近年はインターネットで症状を入力すると、関連する病名や適切な受診先が調べられるサイトもあるので、書籍よりもインターネットで検索する人が多いようです。
また、ブログやSNSで同じ症状や病気の患者の闘病記などを見て、情報収集をします。患者は自身で症状や病気について調べることで、不安が大きくなる場合もあります。
③受診・診断
医療機関を受診して、診察や検査を受けます。
- 問診
- 診察
- 検査
- 診断結果の告知
- 治療方針の説明
患者は医療機関で検査を受け、医者から診断結果を聞きます。そして、治療方針の説明を受けた後に承諾をして、治療を開始します。
完治する病気の場合でも、患者は今後の治療や闘病生活に大きな不安を抱えます。予想よりも病気が進行していたり重かったりした場合は、事実を受け入れられないこともあります。医療従事者は患者の気持ちに寄り添って、患者の意見を尊重することが重要です。
④治療
病気によって、治療法はさまざまです。たとえば、がんの治療法には以下の4つがあります。
- 手術療法
- 薬物(化学)療法
- 放射線療法
- 免疫療法
患者は、「どんな治療法があるのか」「どの治療法が良いのか」「名医はいるか」「権威がいる病院はどこか」など、治療に関してさまざまな情報を調べます。選択肢を広げるために、セカンドオピニオンを検討する患者もいるでしょう。
⑤フォロー
治療後は、治療に関する評価や患者のフォローをします。その内容は、以下のとおりです。
- 治療の評価
- 患者への治療に関する評価の説明
- 経過観察
- 完治までの継続治療または終末期のフォロー
治療後は治療に対して評価をし、患者にも評価を伝えます。完治までさらなる治療が必要な場合は、患者に説明し継続治療を実施。これ以上の治療法がない場合は、終末期のケアが提供されます。
治療が成功し、完治までの道筋が見えた患者は喜びもひとしおでしょう。完治が難しい患者は、余命を受け入れる場合もあれば、ほかに治療法がないか自身で調べる場合もあります。医療従事者は患者の意見を尊重し、フォローを続けます。
ペイシェントジャーニーマップを作るメリット
ペイシェントジャーニーマップを作るメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 患者がどのように感じ、考えているかがわかる
- 患者の考えがわかることで、患者の行動に対する理解が深まる
- ペイシェントジャーニーマップを共有することで、関係者間の認識が統一できる
患者への理解を深めるにあたり、ペイシェントジャーニーマップはとても有効な手段です。
医療機関主導の医療提供では、一方的な治療になってしまい患者とすれ違いが生じる可能性があります。コミュニケーションがうまく取れないと、信頼も築きにくいでしょう。
ペイシェントジャーニーマップを活用することで、患者の考え方やそれに伴う行動の理由がわかり、患者ファーストの医療を提供することができるのです。
また、医療従事者間だけでなく医薬品を提供する製薬会社などとも、治療フローの共通認識が可能になります。
ペイシェントジャーニーの必要性
医療機関が患者中心の医療を提供するうえで、ペイシェントジャーニーは重要な役割を果たします。ペイシェントジャーニーでは、発病から検査、診断、治療、回復期・終末期のプロセスにおける患者の考え方や気持ち、またそれに伴う行動について理解することが可能です。また、あわせて患者の潜在的ニーズを知るきっかけにもなります。患者の気持ちを理解したうえで、意思決定をサポートすることで、患者と医療機関との信頼性は高まるでしょう。
なお、製薬会社や医療機器メーカー、医療材料メーカーにおいてもペイシェントジャーニーは重要な役割を果たします。各メーカーの担当者は医療従事者とは異なり、患者と接する機会がほとんどありません。しかし、ペイシェントジャーニーによって、患者と直接関わらずとも患者について知ることができます。症状や検査値だけを見て製品に患者を当てはめるのではなく、患者を中心として考えた製品提供ができるのです。
ペイシェントジャーニーがマーケティングにつながる
ペイシェントジャーニーは患者の感情の動きやそれに伴う行動を理解しやすく、製品戦略のヒントにつながります。
文献では疾患の概要や症状を知ることができますが、患者のリアルな声はわかりません。たとえば、ある疾患に対して経口薬しかなかったとします。しかし、ペイシェントジャーニーを見て「食べ物だけでなく、水も喉を通りにくい」とわかると、「違う投与経路の薬の開発が必要」といった発想に行きつくのです。患者のことを深く理解できるため、開発側の主導ではなく患者ファーストの開発が可能になります。
ペイシェントジャーニーは医療従事者だけでなく、製品の開発や販売をする製薬会社や医療機器メーカー、医療材料メーカーにとっても役立つツールといえるでしょう。
まとめ
ペイシェントジャーニーは医療機関で診断・治療を進めていくプロセスと、患者がどのように感じ・考え・行動するのかといった全体像を視覚的に把握できるツールです。患者ファーストの治療をするにあたって、医療従事者のみならず製薬会社や医療機器メーカーなどからも重要視されています。
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