第4回 『薬剤管理』と『調剤薬局』 7回シリーズ「診療報酬と病院」
2022.09.30
2024.05.22
本コラムは当社の田中賢悟が、2022年度診療報酬改定の内容を病院関係者さまの目線により近づけて分析、製薬会社の現場担当者さまが取引先さまと情報共有する場面でお役立ていただけるよう分かりやすく解説しています。なお、記載内容は個人の見解に基づくものであり、個人が所属する組織の公式見解ではありません。
目次
「薬剤師配置数」
「医療法第一九条2項一 薬剤師 精神病床及び療養病床に係る病室の入院患者の数を百五十をもつて除した数と、精神病床及び療養病床に係る病室以外の病室の入院患者の数を七十をもつて除した数と外来患者に係る取扱処方箋の数を七十五をもつて除した数とを加えた数」
冬季オリンピックが我が国長野県で開催された1998年、第3次医療法改正において病院薬剤師の定数基準が見直され、医療法施行規則で病院の薬剤師の人員配置の標準となる新基準配置数が規定された。
この時、併せて調剤薬局に配置する薬剤師の数も「処方箋40枚に1人」と定められ、調剤薬局に対する人員配置の基準はこの時から、病院よりも手厚い配置基準となった。
さて、医薬分業に関して厚労省は、1989(平成元)年より当時の国立病院のうち37のモデル病院に対して積極的に院外処方を発行(完全分業、院外処方箋受取率70%以上)するよう指示し1997年度には35%を超え(厚労省報道発表資料「モデル国立病院の院外処方せん発行状況について・1995(平成7)年度」https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/0807/0730-1.html)、2020(令和2)年度医科保険による院外処方率は、総数で77.3%となった(2020(令和2)年社会医療診療行為別統計の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa20/dl/gaikyou2020.pdf)。
一方、入院患者における薬剤師の業務としては、それまで入院調剤技術料として患者に服薬説明を実施した場合に算定できる診療報酬が、1994(平成6)年度診療報酬改定で「薬剤指導管理料」に改変され、患者一人に対し1カ月で最大600点、1998(平成10)年にはさらに増点し、月最大1,060点算定可能となる大改正が行われた。
「薬剤管理指導と調剤薬局」
病院経営者の立場から見ると、医療法による人員配置の最低数は守らなければならず、とはいえ潤沢に人と採用することはできない。言葉を替えると、最低限配置基準を守り、かつ医業収入を増やせる体制にするのが理想である。院外処方せんの発行推進と医薬分業が声高に掲げられ、これに呼応するがごとく諸点数の拡充がされ、ある種不安定な薬価差益の収入より原資ゼロの指導管理料となれば、これに乗らないわけにはいかない。
病院薬剤師は入院中患者への薬剤指導に業務をシフトし、不足する人手は、外来患者の院外処方化へ変わった。
こうして街中には調剤薬局が立ち並ぶことになったわけだが、結果として立地環境や仕入れ価格の公平性を守るため、門前薬局に対する調剤料減点措置がとられたり(特定調剤基本料)、同一グループ調剤薬局の調剤基本料を設定(調剤基本料3)したりするなど特定事業者に利益が偏らない対策をとらねばならなくなった。
そして一度、規制緩和された敷地内調剤薬局は、2022(令和4)年度診療報酬改定において、高度急性期医療を担う病院については敷地内薬局がある場合に「急性期充実体制加算」が算定できないようにするなど、これまで調剤薬局に対してだけだった制約事項が、処方する立場の医療機関にも課せられることとなった。
調剤業務に限ってみれば薬価のマイナス改定とも併せ、一見減点傾向が強く厳しい診療報酬体系になったかと思われるが、改めて2022(令和4)年度診療報酬改定内容を見てみると、中央社会保険医療協議会が薬剤師の業務に係るテーマとして掲げた、いわゆる「モノからヒトへ」の転換政策が色濃く出ており、調剤薬局の薬剤師が、薬剤指導管理をすることに対して手厚い点数が配分された。
リフィル処方箋の運用が始まり、ポリファーマシー対策についてもかかりつけ薬局に大きな期待が向けられた。
院外処方箋の交付から始まった医薬分業は、双方が持つリソースを最大限活用する方法を考え、両者が一丸となって患者を診る時代がきたのだ。
2021(令和3)年10月22日(金)中央社会保険医療協議会 総会(第492回) ○調剤(その2)について