創薬とは?医薬品ができるまでの流れやAI創薬についても解説 #045
2023.06.15
2024.05.10
疾病に有効な化合物を発見し、実験や治験などをして、最終的に薬として製品化するまでのプロセスが創薬です。創薬には多くの時間と費用がかかるものの、最近ではAIの活用による効率化も進んでいます。
本記事では、創薬の流れとAI創薬について解説します。
目次
創薬とは
創薬とは簡単にいえば、新しい医薬品を作り出す過程のことです。医薬品が実際に病院などで使われるまでには、素になる化学物質の発見、基礎研究や臨床試験、厚生労働省の承認申請と審査など多くの段階を経なくてはいけません。
また、創薬にかかる期間は10~18年、費用は200億円など多くの時間と費用がかかります。
創薬と育薬の違い
薬の開発には、大きく分けると創薬と育薬、2つのプロセスがあります。新薬は創薬により製造するだけでなく、育薬により育てることでより安全・安心に使えるようになります。
創薬とは先述のとおり、新薬の候補となる化合物を発見し、実際に製品化されるまでの過程のことです。一方、育薬とは新薬が病院で実際に使われてから得られる情報を基に、より適切な使用方法を発見したり、改良したりするプロセスを指します。
病院では、創薬段階とは異なり、年齢・性別・体質・病状などの違いのある多くの患者に新薬が投与されます。これらのデータを基に新薬を改良する段階が育薬です。
創薬のプロセス
創薬は基礎研究から認可と発売まで、5つのプロセスを経て実際に医療機関で使用されます。育薬と合わせた創薬のプロセスを解説します。
基礎研究
新薬の開発は、特定の疾病に対する有効成分の発見から始まります。植物や微生物などの天然素材だけでなく、合成成分やバイオテクノロジー、ゲノム情報の活用など、科学技術を結集して成分の発見と研究をします。
非臨床試験
動物実験または、培養細胞を使って新薬候補である物質の有効性や安全性を確かめる段階です。主に、候補物質の吸収や代謝、排泄の過程の観察、品質や安全性に対する試験をします。
臨床試験
臨床試験ではヒトを対象に、非臨床試験で安全性が確認できた「治験薬」を使って、安全性と有効性を確認します。なお、同意を得た健康なヒトを対象に、以下の3つのフェーズがあります。
フェーズ1
少数の健康なヒトを対象に、副作用が発生しないかなど、安全性を確認します。
フェーズ2
少数の患者を対象に、成分の有効性や安全な投与量、適切な投与方法などを確認します。
フェーズ3
多数の患者を対象に、既存薬と比較した安全性や有効性を確認します。
承認申請と審査
臨床試験で新薬の成分の安全性や有効性、品質が確認できた後は、厚生労働省の承認申請に進みます。申請すると、医薬品医療機器総合機構と薬事・食品衛生審議会が審査します。
認可と発売承認申請と審査
これらのプロセスを経て成分が薬として承認されて初めて、製造・販売が可能となります。なお医療保険対象新薬は、薬価基準制度に基づき厚生労働省が医薬品の品目や販売価格を決定します。
製造販売後調査・試験
育薬の段階では多くの患者への新薬の使用情報を基に、適切な使用方法や副作用の有無を確認し、さらに安全で有効性の高い医薬品へと改良します。なお、新薬は販売後も有効性や安全性の調査と報告が義務付けられています。
AI創薬とは
AI創薬とは、人工知能(AI)を活用した新薬の開発方法のことです。AIはビッグデータの活用や分析を得意とし、活用により創薬を効率化するのが目的です。
創薬では以前からAIが活用されていたものの、近年ではターゲット選定やリード化合物の探索など、AIを応用できるシーンは増加しています。研究者の勘や経験を頼りにする必要がないため、AIの活用により、開発期間の短縮やコスト削減が期待されています。
AI創薬が注目される理由と製薬業界の将来
現在の創薬プロセスの問題点には以下があります。
- 創薬の成功率が低い
- 創薬プロセス全体が非効率的
創薬が成功する確率は約1万3,000件に1件、さらに、最近の成功率は20年前に比べ半数近くまで低下しています。
また、創薬プロセスではターゲットに合う化合物のスクリーニングが必要ですが、これを研究者の経験や勘に依存するなど、非効率的な部分も多くあります。AIの活用により、創薬が抱えるこれらの問題の解決が期待できるでしょう。
創薬プロセスの問題をAIが解消
大量のデータを高速かつ正確に分析できるAIを活用すれば、データを基にした成功率の高いスクリーニングが可能です。このため、実験回数を抑えて新薬開発が進められ、コストと期間の短縮につながると期待されています。
また、創薬にAIを導入する製薬会社が増えていることからも、今後はますます、製薬業界全体でAIを活用する動きが加速するでしょう。
創薬はAIとビッグデータの活用で効率化できる
創薬とは新薬の開発プロセスのことです。創薬分野も将来的にはAIの活用により、コスト削減や開発期間の短縮が期待されています。
医療・健康分野のICT化を支援するMDVでは、製薬会社で活用できる製品やサービスを提供しています。新規開発の市場規模分析をしたいなど、希望のある人はぜひお気軽にご相談ください。