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全身麻酔を受ける重症筋無力症患者に対するスガマデクスの安全性:レトロスペクティブデータベース研究RWD × 医学論文解説

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論文紹介

重症筋無力症患者に対する神経筋遮断薬を用いた手術の麻酔管理は課題になっている。筋弛緩回復剤としてスガマデクスが使用されてから、神経筋遮断薬の安全な使用が可能になった。スガマデクスの効能/効果は「ロクロニウム臭化物又はベクロニウム臭化物による筋弛緩状態からの回復」となっている。本研究ではスガマデクスの使用による有害事象のリスクについて、本剤を使用しない患者と比較検討した。症例数の少ない疾患における手術患者が対象の為、実臨床での研究は困難と考えられ、大規模RWDで実施可能となる研究となる。

全身麻酔を受ける重症筋無力症患者に対するスガマデクスの安全性:レトロスペクティブデータベース研究

Isao Nahara, Masato Takeuchi, Hiroshi Yonekura, Chikashi Takeda, Koji Kawakami

題名Safety of sugammadex for myasthaenia gravis patients undergoing general anaesthesia: a retrospective database study
著者Isao Nahara, Masato Takeuchi, Hiroshi Yonekura, Chikashi Takeda, Koji Kawakami
出典BJA Open
領域重症筋無力症

Safety of sugammadex for myasthaenia gravis patients undergoing general anaesthesia: a retrospective database study – BJA Open
https://www.bjaopen.org/article/S2772-6096(22)00091-0/fulltext

背景

重症筋無力症患者に対する神経筋遮断薬(NMBD)の使用は、周術期管理における課題として残っている。スガマデクスはNMBDの安全な使用を可能にした。我々は、全身麻酔下の重症筋無力症患者において、NMBDの使用によって有害な転帰、筋緊張性クリーゼや気管切開に使用する治療法が影響を受けるかどうかを調査した。

方法

全身麻酔を受けた重症筋無力症患者を、2010年1月1日から2020年11月30日までの間に日本におけるDPCデータから検索した。本データベースには、重症筋無力症の重症度(オッサーマン分類)の情報は含まれていなかった。ロクロニウムとスガマデクスの投与を受けた患者を、傾向スコアマッチング後にNMBDを投与しなかった患者と比較した。緊急手術や心臓手術を受けた患者、麻酔前に気管挿管を行った患者は除外した。主要アウトカムは、筋弛緩性クリーゼに使用された術後治療であった。

結果

重症筋無力症を併発した2304人の手術患者のうち、傾向スコアマッチングにより、ロクロニウムとスガマデクスを投与した788人、NMBDを投与しなかった449人を特定した。重症筋無力症に対する治療法を比較したところ、両群間に有意差は認められなかった(6.2% vs 5.3%、ハザード比1.14、95%信頼区間0.70-1.85)。

結論

重症筋無力症患者に対するロクロニウムとスガマデクスの使用は、NMBDを使用しない場合と比較して、筋無力症クリーゼに使用する術後治療に有意な影響を及ぼさないことが示された。重症筋無力症の重症度が十分に調整されていないのと同様に、術後にスガマデクスを使用したロクロニウムの術中投与が許容されるかどうかは不明であり、さらなる検討が必要である。


下寺 稔

ウェルディーコンサルティング 代表
日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家
MSD株式会社にて、安全対策業務、使用成績調査、製造販売後データベース調査、及び疫学関連業務を担当した。2021年にリアルワールドデータコンサルタントとして事業を開始し、安全性監視計画及び、製造販売後データベース調査を中心とするリアルワールドデータに関するコンサルティングを行っている。

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