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静脈血栓塞栓症患者におけるエドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンの有効性と安全性の比較:コホート研究RWD × 医学論文解説

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論文紹介

本研究は、活性化血液凝固第X因子(第Xa因子)を選択的・直接的に阻害する経口抗凝固剤であるエドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンの静脈血栓塞栓症患者における有効性と安全性についてRWDを用いて直接比較したコホート研究である。

静脈血栓塞栓症患者におけるエドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンの有効性と安全性の比較:コホート研究

Toshiki Fukasawa, Tomotsugu Seki, Masayuki Nakashima, Koji Kawakami

題名Comparative effectiveness and safety of edoxaban, rivaroxaban, and apixaban in patients with venous thromboembolism: A cohort study
著者Toshiki Fukasawa, Tomotsugu Seki, Masayuki Nakashima, Koji Kawakami
出典Journal of Thrombosis and Haemostasis
領域静脈血栓塞栓症

Comparative effectiveness and safety of edoxaban, rivaroxaban, and apixaban in patients with venous thromboembolism: A cohort study – PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35748327/

背景

静脈血栓塞栓症(VTE)患者におけるリバーロキサバンとアピキサバンの有効性と安全性を比較した研究はいくつかあるが、これらの薬剤とエドキサバンを直接比較した研究はない。今回、VTE患者におけるエドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンの有効性と安全性を比較検討した。

方法

本研究は、日本の病院管理データベースを用いたレトロスペクティブなコホート研究であり、エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンの治療を開始したVTE患者を3群に分類した。有効性の主要評価項目はVTEの再発、安全性の主要評価項目は頭蓋内出血と消化管出血の複合とした。追跡期間は最大180日間であった。各群のベースライン特性は、傾向スコアマッチの重み付けを用いてバランスをとった。

結果

エドキサバン3,369人、リバーロキサバン1592人、アピキサバン1998人の投与開始者が確認された。VTE再発予防に3剤間で有意差はなかった(調整後罹患率比adjusted incidence rate ratio[aIRR]は、エドキサバン対リバーロキサバンで0.77、95%信頼区間[CI]0.45-1.30、エドキサバン対アピキサバンでaIRRは0.92、95%CI 0.54-1.56、リバーロキサバン対アピキサバンではaIRR 1.20、95%CI、0.69-2.10)。また頭蓋内出血もしくは消化管出血でも有意差は認められなかった(エドキサバン対リバーロキサバンでaIRRは1.57, 95% CI, 0.85-2. 90、エドキサバン対アピキサバンではaIRRは1.30、95%CI、0.76-2.23、リバーロキサバン対アピキサバンでは0.83、95%CI、0.42-1.64)。

結論

日常診療下において、エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンは、VTE治療において同様の有効性と安全性を有すると考えられる。


前田 玲

日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家
外資系製薬会社にて20年以上医薬品安全性監視関連業務(RMP、使用成績調査等)に従事してきた。また業界活動を通して薬機法、RMP、GPSP、データベース・アウトカムバリデーション関連の通知類に対してコメントしてきた。現在、MDV社等の顧問として医薬品の安全性管理の観点より助言している。

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