静脈血栓塞栓症の疫学と治療パターン:日本における時系列の観察研究
Shoko Takahashi, Miki Imura & Jun Katada
題名 | Epidemiology and Treatment Patterns of Venous Thromboembolism: an Observational Study of Nationwide Time-Series Trends in Japan |
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著者 | Shoko Takahashi, Miki Imura & Jun Katada |
出典 | Cardiology and Therapy |
領域 | 静脈血栓塞栓症 |
Epidemiology and Treatment Patterns of Venous Thromboembolism: an Observational Study of Nationwide Time-Series Trends in Japan | Cardiology and Therapy
https://link.springer.com/article/10.1007/s40119-022-00284-4
背景
抗凝固療法の治療動向に関するこれまでの研究は、入院患者を対象としたものがほとんどであった。本研究では、2011年から2018年までの日本における外来患者を含むVTE患者の治療状況を明らかにし、現行のガイドラインの遵守状況を評価することを目的とした。
方法
診療報酬データベース(株式会社メディカル・データ・ビジョン)からVTE治療を受けた入院患者および外来患者のデータを抽出し、解析した。
結果
対象はVTE患者79,330人で、半数はVTE以外の疾患で入院中に診断された。外来治療の割合は2015年から2018年にかけて有意に増加したが(Cochran-Armitage 傾向検定、P<0.0001)、肺塞栓症(PE)診断後は80%が入院中に抗凝固療法を受けていた。外来患者として治療されたVTE患者の割合は、活動性のがんが存在する場合でも入院患者の割合に劣ることはなく、抗凝固薬の選択に明確な差はなかった。直接経口抗凝固薬(DOAC)による治療には、推奨される初期強化療法が必ずしも含まれていなかった。DOACの治療期間には大きなばらつきがあり、使用期間の中央値はVTE治療ガイドラインで推奨されている期間よりも短かった。
結論
VTEの外来治療が徐々に増加していることは、ガイドラインの推奨に沿ったものと思われるが、PEの外来治療はさらに実施される可能性がある。他の疾患で入院中にVTEと診断された患者の割合が多いことから、血栓症予防のための院内マニュアルのさらなる活用の重要性が示唆される。がんの有無は、VTEに対する抗凝固療法という基本的な治療戦略に影響を及ぼさなかったようである。今後の研究では、外来で安全かつ効果的に治療できる患者の特徴をより明確にし、ガイドラインで推奨されているよりも短い治療期間での抗凝固療法や、初期強化療法を行わないDOAC療法が患者の転帰を改善するかどうかを検討することが期待される。