リアルワールドエビデンス(RWE)とは?目的や期待される効果を解説 #072
2024.05.21
2024.06.11
近年、医療業界ではRWEというキーワードに注目が集まっています。RWEと他の情報を組み合わせることにより、患者の治療計画や製品が効果的に設計されているかどうかの評価が可能です。
本記事では、今注目のRWEとは何かや臨床試験との違い、主な目的、現状、今後、期待されることについて分かりやすく解説します。
目次
リアルワールドエビデンス(RWE)とは
RWEとは、幅広い情報源から得た医薬品の使用状況や、想定されるメリット・デメリットに関連する臨床エビデンスです。英語ではReal-WorldEvidenceと表記します。RWEは、リアルワールドデータ(Real-WorldData:RWD)を解析して導き出します。RWDとは、さまざまな情報源から日常的に収集された患者の健康状態および医療の提供に関するデータのことです。
リアルワールドデータは多岐にわたり、以下のような例が挙げられます。
- 電子カルテ
- DPCデータ
- レセプト
- 患者登録・レジストリ
- 健診データ
- ウェアラブルデバイス等から得られるデータ
RWEと臨床試験の違い
RWEと臨床試験データはしばしば混同されることがあります。臨床試験データは、特定の母集団を対象に計画的に実施された試験から得られます。研究や検証を目的としており、一定のルールに基づいて実施されることから、信頼性と正確性の高い情報です。一方のRWEは、不特定多数の日常的なデータが情報源です。患者のデータだけでなくその背景にあるさまざまな情報も含んでいることから、研究や検証だけでなく幅広い用途に利用できます。
RWEと臨床試験データは、どちらが優れているということではなく、目的に応じて使い分けられています。
RWEの目的
RWEの主な目的は、治療法が実際の現場でどのくらい役立てられているのかを明らかにすることです。
現在の医療現場で、薬物または治療法を適正に評価するために用いられているRCT(RandomizedControlledTrial)は、被験者をランダムに割り当てて試験をします。 この方法は、当該薬物や治療法が効果的なものかどうかを確かめるためには有効な手段です。しかし、抵抗力の低い子供や高齢者、複数の疾患を持っている人は参加しにくく、さまざまな背景を持つ患者がいる日常診療の中では、当てはめられないケースも出てきます。
RWEは、RCTに参加できない人も含めたあらゆる人々の日常的なデータを収集・分析するため、治療が本当に役立っているのか、効果を発揮しているのかなど、より実態に即した検証ができます。RWEによってRCTを補完することができるでしょう。
RWEの現状
米国に追従する形で、日本でもRWEに関する研究が活発になっています。ただし、RWE を実際に活用するには課題も多く、例えば透明性の高い解析手法や基盤の確立、RWE を承認申請に用いる際のガイドラインの策定などが必要です。また、活用できるデータを増やしていくこと、複数のデータを連結させていくことなども課題となるでしょう。
RWDとの違い
RWDとRWEは密接な関係がありますが、両者はイコールではありません。RWDは日常の医療や、病院のデータなどから得られるビッグデータで、このデータの解析によって得られるエビデンスがRWEです。つまり、RWDはRWEの情報源であり、基盤であるといえます。より有用なRWEを得るためには、豊富なRWDと、それを解析する適切な手段が必要です。
RWEで期待されること
RWEの活用によって、以下のような成果が期待できます。
- 医師による診断・治療の効率化
- 医薬品や医療機器の使用に伴うリスクの発見
- 健康管理や予防医療の質の向上
- 医薬品の臨床開発・承認申請の短縮化
- 介護サービスの質の向上
- 行政による医療政策の評価および対策の実施
さまざまなデータを収集・分析して得たRWE を活用することで、データの供給元である国民や患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に役立つと考えられています。また、RWEを用いて新しい医薬品や医療機器の評価をすれば 、有効性やリスクの早期発見につながり、臨床開発や承認申請がスムーズに進みやすくなるかもしれません。実際、欧米ではRWEが臨床開発の承認申請、保険償還、薬価交渉などに活用されるケースが増えてきています。日本でRWEが注目され始めたのは最近ですが、今後は法整備やガイドラインの策定とともに、現場への導入が進められていくと考えられています。
RWEの活用によってQOL向上が期待される
RWE とは、医療に関する多彩な情報を収集・分析することによって得られるエビデンスです。多角的な情報から得たエビデンスを活用すれば、新しい医薬品や医療機器、治療法の評価、臨床開発や承認申請に役立てられます。日常の膨大なデータを情報源にしたRWE は、さまざまな用途に活用できるため、健康管理や予防医療の質の向上などへの貢献にも期待が寄せられています。