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コラム

製薬業界で重要視されているCXとは?必要性や課題、具体的な戦略について解説 #074

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近年、製薬業界においてCX(カスタマーエクスペリエンス)が重視される傾向にあります。既に他の業界ではCXは主流の考え方となっていますが、製薬業界ではまだ新しい概念と考えられるでしょう。製薬業界にもCXを取り入れることで、最終的には収益の成長や従業員エンゲージメントの向上を期待できるといわれています。

本記事では、CXの基礎知識や、製薬業界におけるCXの重要性と現状の課題、NPSの概要、製薬業界でのCX戦略について分かりやすく解説します。

CX(カスタマーエクスペリエンス)とは

CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、商品を購入するまでの過程や、それを使用するプロセス、購入後のフォローアップまでに顧客が体験する価値全体を示すビジネス用語です。日本語では、顧客経験価値、顧客体験価値などと呼ばれています。

従来は商品やサービスの機能・性能・価格といった合理的な価値がフォーカスされていました。現在ではそこに顧客が感じる感情的な体験価値を上乗せすることで、商品やサービスの価値全体を向上させ、他社との差別化を図れるようになると考えられています。

製薬業界におけるCX(カスタマーエクスペリエンス)の重要性と現状の課題について

従来の製薬業界では、風邪や糖尿病などの生活習慣病に関する医薬品を主としたプライマリー領域での新薬創出が主な経営戦略となっていました。しかし近年では、がんの研究や治療などを専門とするオンコロジー(腫瘍学)領域や、希少疾患領域など、治療法が確立されていない病気のための医薬品創出に戦略がシフトされつつあります。これらの疾患領域では、プライマリー領域よりも専門的な知識・情報を医師や患者に提供しなければなりません。

CXの改善に注力し、医師や患者のニーズをより満たす情報を提供できるようになれば、他社との差別化が進み、マーケットシェアの拡大獲得につながりやすくなります。

ただし、製薬業界におけるCX向上には課題もあります。その一つが、医師や患者とのコミュニケーションの取り方です。これまで製薬会社はMRによる対面コミュニケーションを主流としていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響によって従来の手段を活用するのが難しくなっています。

そこでインターネットを通じた情報提供に注目が集まっていますが、システムの導入に手間やコストがかかること、デジタルチャネルを活用できる人材が少ないことなどが大きな課題となっています。

患者エンゲージメントの役割

患者エンゲージメントとは、医薬品を開発する段階から患者と積極的にコミュニケーションを取り、開発を進めていく手法のことです。従来の医薬品開発は医師や製薬会社などの専門家が主体となってきましたが 、CX向上の観点から、患者とのコミュニケーションを重視する企業が増えてきています。

実際に治験をして 、参加した患者の意見や取得したデータを参考にすることで、CXの改善や向上を実現しやすくなります。

データ分析による洞察

医師は日頃から医薬品に関する情報収集をしているとともに、患者に対してさまざまな治療、薬剤処方をして います。こうした医師の体験をデータとして収集・分析することで、医師がその薬剤に対してどのように思ったか、今後も使用したいと感じたかといったデータを把握することができます。

データを分析して得られた結果は、NPS(ネット・プロモーター・スコア)と呼ばれる指標で計測することが可能です。NPSについては次章で詳しく解説します。

RWDとの違い

RWDとRWEは密接な関係がありますが、両者はイコールではありません。RWDは日常の医療や、病院のデータなどから得られるビッグデータで、このデータの解析によって得られるエビデンスがRWEです。つまり、RWDはRWEの情報源であり、基盤であるといえます。より有用なRWEを得るためには、豊富なRWDと、それを解析する適切な手段が必要です。

NPS(ネット・プロモーター・スコア)とは

NPSとは、医師や患者などの顧客が商品・サービスに対して抱く信頼度や愛着度を計測するための指標です。製薬業界の場合は、その医薬品をどの程度おすすめするかという質問に対し、度合いを0~10までの11段階で評価してもらいます。

0~6までは批判者、7~8は中立者、9~10は推奨者とし、それぞれの数を集計して得た割合を出したら、推奨者の割合から批判者の割合を差し引いてNPSスコアを算出します。

NPSを活用すると、どのような理由でおすすめしたいか(したくないか)をデータとして分析できるようになり、顧客や患者のニーズの把握に役立てることが可能です。

製薬業界でのCX戦略

製薬業界でCX向上を目指すためには、DXの活用やレギュレーションとコンプライアンスとの調査、マルチチャンネルの最適化といった戦略が効果的とされています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用

DXとは、企業がAIやIoT、ビッグデータなどを用いて新たなビジネスモデルを創出することです。コロナ禍などによって対面コミュニケーションが難しい状況がある中で、インターネットを活用した交流や情報の提供は優先的に取り組むべき課題の一つです。

また収集したデータを効率よく分析するには、AIやIoTの活用が欠かせません。

レギュレーションとコンプライアンスとの調和

DX推進を始めとする組織変革をする 際は、レギュレーションやコンプライアンスとの調和を意識する必要があります。変革プロセスのスピードアップを重視するあまり、社内でレギュレーション違反やコンプライアンス違反が横行すると、企業イメージが大きく崩れかねません。

CX向上を目指す際は、社内でレギュレーションやコンプライアンスの徹底を図り、基盤を整えておくことが大切です。

マルチチャネルの最適化

製薬会社と医師とのタッチポイントを増やすには、複数のチャネルを上手に活用することが大切です。

例えば、Webサイトの開設・運用やリモートMRサービスの提供、チャットボットの運用などが挙げられます。ニーズやシーンに合わせて複数のチャネルを使い分ければ、より効率的にCX改善を進められるでしょう。

製薬業界ではCX向上や改善が求められている

現代の製薬業界では、医師や患者と積極的にコミュニケーションを取り、CX向上や改善を目指すことが求められています。従来の対面コミュニケーションに頼るだけでなく、複数のチャネルを使い分けたコミュニケーションや情報収集をする 環境を整えなければなりません。

そのためにはDX推進に取り組む必要がありますが、レギュレーションやコンプライアンスに違反すると、企業としてのイメージや価値を著しく損なう可能性もあります。社内でのコンプライアンス徹底を配慮しつつ、DXやマルチチャネルの導入などを進めていくようにしましょう。

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