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ベンダムスチン+リツキシマブの一次治療を受けた低悪性度B細胞リンパ腫患者における二次癌および感染症のリスク: 請求データベースの解析RWD × 医学論文解説

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論文紹介

リンパ系の癌の治療に使用されるベンダムスチンには強力な免疫抑制作用がある。本研究では二次原発悪性腫瘍と感染症のリスクをリツキシマブ単独療法、あるいは他の併用療法と比較した。主解析はコホートデザインを用いて、感度解析は異なるデザインのネステッドケースコントロール及び傾向スコアマッチングを行いて、研究の妥当性を確認している。

ベンダムスチン+リツキシマブの一次治療を受けた低悪性度B細胞リンパ腫患者における二次癌および感染症のリスク: 請求データベースの解析

Satoshi Dote, Ryo Inose, Ryota Goto, Yuka Kobayashi, Yuichi Muraki

題名Risk of a second cancer and infection in patients with indolent B-cell lymphoma exposed to first-line bendamustine plus rituximab: A retrospective analysis of an administrative claims database
著者Satoshi Dote, Ryo Inose, Ryota Goto, Yuka Kobayashi, Yuichi Muraki
出典Hematological Oncology.
領域B細胞リンパ腫

Hematological Oncology. 2023 Aug;41(3):354-362. doi: 10.1002/hon.3128. Epub 2023 Feb 21
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36792059/

背景

ベンダムスチンには強力な免疫抑制作用がありT細胞リンパ球減少を引き起こすため、二次原発悪性腫瘍(SPM)につながる可能性があり感染症のリスクが高まる。

方法

Medical Data Visionの請求データベースを用いて、2009年から2020年の間に初めてリツキシマブベースの化学療法を受けた低悪性度B細胞リンパ腫(iBCL)の患者におけるSPMの累積発生率、6ヵ月以内の感染症、および全生存期間(OS)を比較した。グレード3bの濾胞性リンパ腫または悪性腫瘍の既往のある患者は除外した。

結果

対象患者5234人は、リツキシマブ単剤療法(N=780人)、RCHOP/RCVP/RTHPCOP※1(ドキソルビシンをピラルビシンに置き換え)(N=2298人)、ベンダムスチン/リツキシマブ(BR)(N=2156人)の3つのコホートに割り付けられた。589件のSPMが記録され、そのうち骨髄異形成症候群が最も多かった(1.7%)。SPMの累積発生率は、リツキシマブ単剤療法(p < 0.01)またはRCHOP/RCVP/RTHPCOP療法(p < 0.0001)を受けた患者よりもBR療法を受けた患者で有意に高かった。5年間の累積発生率は、それぞれ18.1%、12.5%、12.9%であった。Fine-Grayサブディストリビューションハザードモデル※2では、BRはRCHOP/RCVP/RTHPCOPよりもSPMの累積発生率が有意に高かった(サブハザード比、1.33;95%信頼区間[CI]、1.10-1.61)。さらに感度分析において、全コホートを用いたネステッドケースコントロール研究により一貫した結果が示された:初回ベンダムスチン、初回投与後のベンダムスチン、および任意投与ベンダムスチンのSPMオッズ比(95%CI)は、それぞれ1.43(1.14-1.78)、1.26(0.96-1.64)、および1.33(1.09-1.62)であった。感染症に関しては、RCHOP/RCVP/RTHPCOPと比較したBRの調整オッズ比(95%CI)は以下の通りであった:サイトメガロウイルス感染症13.7(4.88-38.4)、細菌性肺炎0.63(0.50-0.78)、ニューモシスチス肺炎0.24(0.11-0.53)。濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞リンパ腫の患者では、RCHOP/RCVP/RTHPCOPとBRの間でOSに有意差はなかった。

結論

結論として、iBCL患者では化学療法後のSPMおよび感染症のリスクを考慮した治療戦略が推奨される。

※1 RCHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)、RCVP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン)、RTHPCOP(リツキシマブ、 ピラルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン)

※2 複数のイベントを定義できる時、一方のイベントが起こると他方のイベントが観測できない場合(競合リスクという)に用いる手法


下寺 稔

ウェルディーコンサルティング 代表 日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家 

MSD株式会社にて、安全対策業務、使用成績調査、製造販売後データベース調査、及び疫学関連業務を担当した。2021年にリアルワールドデータコンサルタントとして事業を開始し、安全性監視計画及び、製造販売後データベース調査を中心とするリアルワールドデータに関するコンサルティングを行っている。

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