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進行性パーキンソン病患者におけるレボドパ処方パターン: 日本のデータベース解析RWD × 医学論文解説

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論文紹介

本レトロスペクティブ観察研究は、進行したパーキンソン病患者におけるレボドパの処方の実態を調査した研究である。疾患の進行を定義するために入院時に医療費請求データに入力される日常生活動作スコアを用いている。入院が前提になるような疾患患者が研究対象の場合、その特徴の一つとして、日常生活動作スコアが入力されているDPCデータを活用することで研究が可能となった。

進行性パーキンソン病患者におけるレボドパ処方パターン: 日本のデータベース解析

Atsushi Takeda, Toru Baba, Jun Watanabe, Masahiko Nakayama, Hiroyuki Hozawa, Miwako Ishido

題名Levodopa Prescription Patterns in Patients with Advanced Parkinson’s Disease: A Japanese Database Analysis
著者Atsushi Takeda, Toru Baba, Jun Watanabe, Masahiko Nakayama, Hiroyuki Hozawa, Miwako Ishido
出典PubMed Central
領域パーキンソン病

Parkinsons Dis. 2023; 2023: 9404207.
Published online 2023 Sep 27. doi: 10.1155/2023/9404207
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10550461/

背景

進行したパーキンソン病(PD)患者におけるレボドパの処方量は、日本では欧米に比べて一般的に低用量であるが、日本のPD診療ガイドラインでは疾患の進行に伴って投与量を増やすことが推奨されている。しかし、臨床現場における進行PD患者のレボドパ処方に関するデータは限られている。

方法

本レトロスペクティブ観察研究では、メディカル・データ・ビジョン株式会社のデータベースに登録されている入院患者についてのDPCデータを用いて、日本における進行PD患者の薬剤使用パターンを分析した。研究の対象は、2008年4月1日から2018年11月30日までの間に、異なる2四半期でPDに関連する請求が2件以上あり、退院時に10項目の日常生活動作スコアが60点未満の患者とした。同スコアを進行PDの代理指標とした。主要評価項目は、指標となる入院時のレボドパの処方量とした。他のPD治療薬(PDに適応のある薬)および非PD治療薬の投与量も評価した。

結果

スクリーニングの結果、4,029例の患者が組み入れ基準を満たした(平均年齢76.9歳;83.3%が70歳以上)。指標日では74.0%がレボドパを処方されていた。患者はレボドパに加えて中央値で1種類のPD治療薬を投与されており、それぞれ27.4%と20.2%が1種類または2種類のPD治療薬を併用されていた。PD治療薬以外の薬剤は中央値で2種類であった。指標となる入院時のレボドパ投与量とL-ドパ換算用量相当量(LED)の中央値はそれぞれ418.2mg/日と634.8mg/日(体重で調整、9.0mg/kg/日と13.7mg/kg/日)であった。指標日前後5年間の各6ヵ月刻みのレボドパ投与量およびLED総投与量の中央値は、それぞれ263.9〜330.2mg/日(5.0〜6.5mg/kg/日)、402.0〜504.9mg/日(8.3〜10.1mg/kg/日)であった。

結論

本研究により、多くの日本人の進行PD患者がより高用量のレボドパによる集中的な治療を受けることが可能であることが示唆された。


下寺 稔

ウェルディーコンサルティング 代表 日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家

MSD株式会社にて、安全対策業務、使用成績調査、製造販売後データベース調査、及び疫学関連業務を担当した。2021年にリアルワールドデータコンサルタントとして事業を開始し、安全性監視計画及び、製造販売後データベース調査を中心とするリアルワールドデータに関するコンサルティングを行っている。

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