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パーキンソン病患者におけるイストラデフィリンの服薬アドヒアランス: 集団軌跡分析RWD × 医学論文解説

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論文紹介

アデノシンA2A受容体拮抗薬イストラデフィリンはパーキンソン病治療薬であるレボドパ含有製剤との併用が前提で、その効能・効果は「レボドパ含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるウェアリングオフ現象の改善」であり、効能又は効果に関連する注意として「レボドパ含有製剤の投与量及び投与回数の調節を行ってもウェアリングオフ現象が認められる患者に対して使用すること」とある通り、使用方法は単純なものではない。本研究は、集団軌跡モデルを用いた分析(A group-based trajectory analysis)により、本剤の服薬アドヒアランスのパターンを同定するとともに、関連因子の特徴づけも試みた縦断研究であり、個人差が大きいとされているパーキンソン病治療に有益な情報を提供するものである。

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Toshiki Fukasawa, Etsuro Nakanishi, Hiroo Shimoda, Katsumi Shinoda, Satoru Ito, Shinji Asada, Satomi Yoshida, Sachiko Tanaka-Mizuno, Kayoko Mizuno, Ryosuke Takahashi, Koji Kawakami

題名Adherence to istradefylline in patients with Parkinson’s disease: A group-based trajectory analysis
著者Toshiki Fukasawa, Etsuro Nakanishi, Hiroo Shimoda, Katsumi Shinoda, Satoru Ito, Shinji Asada, Satomi Yoshida, Sachiko Tanaka-Mizuno, Kayoko Mizuno, Ryosuke Takahashi, Koji Kawakami
出典Journal of the Neurological Sciences. 2024 Jul 15:462:123092.
領域パーキンソン病

PMID: 38925070 DOI: 10.1016/j.jns.2024.123092
https://www.jns-journal.com/article/S0022-510X(24)00227-2/fulltext

背景

イストラデフィリン治療の服薬アドヒアランスの様々なパターンを理解することは、標的介入が有益と思われるパーキンソン病(PD)患者を特定するために不可欠である。

目的

この記述的研究は、イストラデフィリンのアドヒアランスのパターンを縦断的に同定し、それらに関連する因子を特徴付けることを目的とした。

方法

日本の病院管理データベースでイストラデフィリン治療を開始した21~99歳のPD患者を同定した。集団軌跡モデルを用いて、月ごとのアドヒアランス日数の割合をモデル化し、360日のアドヒアランスパターンを同定した。多項ロジスティック回帰モデルを用いた単変量解析で、それぞれのアドヒアランスパターンに関連する因子を評価した。

結果

適格PD患者2088人のうち、以下の4つの異なるアドヒアランス群が同定された、一貫してアドヒアランスが高い群(56.8%)、アドヒアランスが急速に低下している群(25.8%)、アドヒアランスが徐々に低下している群(8.5%)、アドヒアランスが徐々に低下し、その後回復している群(9.0%)。一貫してアドヒアランスが高い群と比較して、他の群ではアドヒアランスの低下に関連する以下の特徴がみられた、アドヒアランスが急速に低下している群では、ドパミンアゴニスト(63.8%対69.4%)、モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬(26.8%対31.6%)、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ阻害薬(31.6%対37. 0%)の投与が少なく、不安/気分障害の有病率が高かった(29.9%対24.6%)。徐々にアドヒアランスが低下した群では、MAO-B阻害薬(22.5%対31.6%)、アマンタジン(8.4%対16.1%)の投与が少なく、軽度認知障害/認知症の有病率が高かった(27.0%対18.8%)。アドヒアランスが低下し、その後回復した群では、不安/気分障害の有病率が高かった(34.2%対24.6%)。

結論

臨床医はイストラデフィリンのアドヒアランスのパターンが不均一であることに注意すべきである。


前田 玲

日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家
外資系製薬会社にて20年以上医薬品安全性監視関連業務(RMP、使用成績調査等)に従事してきた。また業界活動を通して薬機法、RMP、GPSP、データベース・アウトカムバリデーション関連の通知類に対してコメントしてきた。現在、MDV等の顧問として医薬品の安全性管理の観点から助言している。

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