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条件付きロジスティックLASSO回帰分析を用いた日本人高齢者における薬剤数と股関節骨折の関連性RWD × 医学論文解説

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論文紹介

高齢者におけるポリファーマシーをテーマにし、医療情報データベース(DB)を用いてアウトカムが取れる骨折との関連を見た。抗パーキンソン病薬の使用が影響したとしている。LASSO (least absolute shrinkage and selection operator) 回帰分析は機械学習を用いた統計手法の一つで、多くの変数を扱える機械学習の中で、不要な変数を選択的に削除する方法が特徴である。データに多くの変数が含まれている医療情報DBの解析手法の一例となる。

条件付きロジスティックLASSO回帰分析を用いた日本人高齢者における薬剤数と股関節骨折の関連性

Takuya Uematsu, Yuta Kawakami, Shuko Nojiri, Tomoyuki Saito, Yoshiki Irie, Takatoshi Kasai, Yoshimune Hiratsuka, Muneaki Ishijima, Manabu Kuroki, Hiroyuki Daida, Yuji Nishizaki

題名Association between number of medications and hip fractures in Japanese elderly using conditional logistic LASSO regression
著者Takuya Uematsu, Yuta Kawakami, Shuko Nojiri, Tomoyuki Saito, Yoshiki Irie, Takatoshi Kasai, Yoshimune Hiratsuka, Muneaki Ishijima, Manabu Kuroki Hiroyuki Daida, Yuji Nishizaki
出典Scientific Reports
領域大腿骨近位部骨折

Sci Rep. 2023 Oct 6;13(1):16831. DOI: 10.1038/s41598-023-43876-3
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37803071/

背景

股関節骨折とポリファーマシーを含む関連因子との関連を検討し、最適な予測モデルを開発するために、日本人の股関節骨折に関する健康保険請求データを用いて集団ベースのマッチドケースコントロール研究をした。

方法

65歳以上の日本人股関節骨折入院患者34,717人と、年齢・性別が1:1にマッチした対照34,717人を対象とした。この研究には69,434人が参加した。全体として、説明変数として16の併存疾患と60の併用薬が用いられた。さらなる解析のために、対象集団は前期高齢者と後期高齢者のカテゴリーが加えられた。

結果

股関節骨折のオッズ比は、前期高齢者においてのみ薬剤の数とともに増加した。AUCは前期高齢者で最も高かった(AUC、0.74、95%CI 0.72-0.76)。抗パーキンソン病薬の使用は最も係数が大きく、多くのカテゴリーで最も影響力のある変数であった。

結論

本研究により、ポリファーマシーを含む危険因子と股関節骨折との関連が確認された。前期高齢者では服用薬剤数の増加とともに股関節骨折リスクは上昇し、良好な予測精度を示したが、後期高齢者ではそのような関連は認められなかった。したがって、日本の前期高齢者は、股関節骨折を予防する積極的な対象集団となる。


下寺 稔

ウェルディーコンサルティング代表 日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家
MSD株式会社にて、安全対策業務、使用成績調査、製造販売後DB調査、及び疫学関連業務を担当した。2021年にリアルワールドデータコンサルタントとして事業を開始し、安全性監視計画及び、製造販売後DB調査を中心とするリアルワールドデータに関するコンサルティングを行っている。

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