
急性心筋梗塞および脳梗塞の発症傾向と併発疾患の分析
冬季は気温の低下により血管が収縮しやすく、血圧の上昇や血流の変化が引き起こされることで、動脈硬化の進行が促されるとされている。その結果、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まり、特に高齢者や基礎疾患を持つ人々において発症率が上昇することが報告されている。
そこでMDVデータを使用し急性心筋梗塞および脳梗塞の患者数の月別推移、10歳刻みの男女別患者数、65歳以上・未満の男女別併発疾患患者比率ランキングを作成した。
初めに急性心筋梗塞と脳梗塞の患者数の月別推移を調査した。

データ対象期間:2019年4月~2024年3月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:377
2019年度が最も高い水準で推移し、以降の年度はやや低下傾向にあるものの、季節的な変動は共通していることが分かる。冬場は年明け2月から3月に急増する傾向が見られる。これは寒暖差による血圧変動に加え、年度末のストレスや生活リズムの乱れが影響を与えている可能性がある。また、2020年度の5月に大きな落ち込みがあるが、これはコロナ禍による救急医療の逼迫や、医療機関の受け入れ制限によって、診断・治療の機会が減少した可能性がある。
続いて、10歳刻みの男女別の患者数を調べた。

データ対象期間:全体(2008年4月~2024年11月)
基礎条件該当施設数:554
急性心筋梗塞や脳梗塞の発症数は加齢とともに増加し、特に50歳以降で大きく増加し、70歳以上で急激に増えることが分かる。また、全体的に男性の発症数が女性より多いが、90歳以上では女性の割合が比較的高くなっており、女性の長寿が影響している可能性がある。
最後に、急性心筋梗塞/脳梗塞の男女別65歳以上・未満の併発疾患患者比率ランキングを作成し、男女別65歳以上・未満の併発疾患患者比率ランキングと比較した。
65歳未満男性 併発疾患ランキングと急性心筋梗塞/脳梗塞患者の併発疾患ランキング


65歳以上男性 併発疾患ランキングと急性心筋梗塞/脳梗塞患者の併発疾患ランキング


65歳未満女性 併発疾患ランキングと急性心筋梗塞/脳梗塞患者の併発疾患ランキング


65歳以上女性 併発疾患ランキングと急性心筋梗塞/脳梗塞患者の併発疾患ランキング


データ対象期間:全体(2008年4月~2024年11月)
※患者比率=併発疾患患者数÷全体患者数(表題名記載の患者数)
全体の併発疾患ランキングでは、年齢によって傾向が異なり、65歳未満では急性の感染症(上気道感染症、胃腸炎など)が多く、65歳以上では高血圧、便秘、胃食道逆流症、脂質異常症などの慢性疾患が主流となっていた。一方、脳梗塞・急性心筋梗塞患者の併発疾患ランキングでは、高血圧が圧倒的に高い比率を占め、心不全、高脂血症、狭心症などの循環器系疾患が上位に挙がる傾向となった。
※本記事は2025年3月3日付で公開されたものです。
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