病院経営支援 What's MDV
病院にとっての売上は「医療費」と呼ばれています
約7割の病院が赤字!?
近年、病院赤字による倒産や統合のニュースを目にすることが増えており、2021年6月度では76.9%の病院が赤字であるとの結果が報告されています(※1)。生活者の医療・健康を守るためにも、また病院を存続させていくためにも、今後病院には経営力が問われます。 (※1)2022年2月22日に一般社団法人全国公私病院連盟が発表した「令和3年病院運営実態分析調査の概要」より。838病院(自治体420、その他公的196、私的190、国立・大学32)より集計。
売上金額である「医療費」を、病院自らは決定できない
では、病院の経営とはどのように行なわれているのでしょうか。
病院も一般企業も、売上高から原価を差し引いたものが利益であることに変わりはありません。しかし、病院の場合は売上金額を自ら決定することが出来ないという大前提があります。
病院にとっての売上金額は医療費です。その医療費は診察でかかる初診料や再診料、入院料、注射料、画像診断料、指導管理料など、様々な医療行為で構成されています。これらの医療費を構成する要素全てに、診療報酬(※2)という形で政府が全国一律の公的価格を細かく設定しているため、病院は売上金額を自ら決定することができないのです。
(※2)診療報酬の価格は、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が物価所得変動などを鑑み審議を行い、原則として2年に1度改定が行なわれます。診療報酬は点数制であり、1点10円で計算します。例えば、初診料では282点で、医療費として2,820円かかります。このうち、通常3割が患者負担で窓口で支払われ、残り7割は国民健康保険や健康保険組合などの保険者から病院へ支払われます。
病院によって異なる「診療報酬」の計算方法
上記で説明した診療行為に対して支払われる診療報酬の計算方法には①「出来高払い制度」、②「DPC(包括支払い)制度」の2通りあります。
①出来高払い制度
日本では、従来出来高払い制度が全ての医療機関で実施されていました。この出来高払い制度は、医者が患者に行った診療行為とその回数に応じて報酬が支払われる「出来高払い方式」を基本としています。検査や処置、投薬など1つ1つの診療行為に診療報酬が支払われるため、医師は必要と判断した医療サービスを安心して提供できるというメリットがあります。
一方で、医療サービスを実施するほど報酬は増える仕組みでもあるため、効率的な医療の実施や患者の早期社会復帰を実現する診療内容などは評価されにくいというデメリットもあり、入院日数の長期化、医療費の増加などに繋がりやすい制度です。
②DPC(包括支払い)制度
出来高払い制度のデメリットを解消し、また医療の効率化・標準化を図るために、厚生労働省は2003年にDPC制度(正式略称:Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System)を導入しました。このDPC制度は、救命救急センターやICUに運ばれるような急性疾患や重症疾患の患者に対して高度で専門的な治療を行う急性期病院が主な導入対象となります。
DPC制度は、入院患者を対象に病名や診療内容を約5,000に分類し、それぞれに対して1日あたりの入院費用を定めた計算方式です。入院費用が定額となる包括評価部分(入院基本料、検査、投薬、注射など医療機関の運営コストとなるもの)と、従来通りの出来高評価部分(手術、麻酔、内視鏡検査、リハビリなど医師の技術を反映するもの)を合算して診療報酬の支払額が決定するという仕組みです。
“質の高い医療”と”黒字経営の実現”に貢献するDPC制度
DPC制度を導入する病院では、厚生労働省への診療データ提出が義務となり、患者数や平均在院日数等の診療実績が公表されるようになります。医療費の適正化、診療データ等の開示による透明性、医療の質向上に寄与しています。
またDPC制度の下では、包括評価部分(入院1日あたりの報酬額)は入院日数が長期化するほど逓減する仕組みとなっているため、病院は患者にとって効果的で効率的な医療を実施し治療する必要があります。
どれほど配慮が行き届いた病室でも、入院生活は患者の体力を奪い、社会復帰を遠ざけていくものです。効率的で効果的な医療を促進することは、患者にとって早期社会復帰や入院にかかる費用の削減となりますし、病院にとってもより多くの治療を必要とする患者を受け入れることができるようになります。
このようにDPC制度では、効果的で質の高い医療を実施する病院が評価されるようになっていますから、黒字経営を実現するには患者メリットの創出が必須です。
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