第2回
カルテコ Webセミナー karteco web seminar

第2回 カルテコユーザーにおくる「いきいきPHRウェブセミナー」

6 月 11 日(金)にカルテコユーザー様向けの無料 WEB セミナーを開催いたしました。
当日のプログラムのアーカイブ動画に加え、動画に入りきらなかったインタビュー内容をテキストでご紹介いたします。

プログラム

新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐる情報の見極め

東京大学医科学研究所 ワクチン科学分野 
石井 健 教授

Q.1新型コロナウイルスのワクチンに関するさまざまな報道があり、情報過多となっている中、特に副反応への不安の声が多くありますが、接種について正しく判断するためには、どのように考えればよろしいでしょうか。

新型コロナのワクチンは、基本的には筋肉注射で2回打ちます。大体3~4週間かけて2回打ちますが、よく効くワクチンということで、頻回に起こる副反応があります。接種箇所の痛みや腫れ、発赤、発熱、疲労感などが出てきます。特に、最初のワクチン接種事業として普及している米ファイザー製のワクチンでは、副反応でアナフィラキシーが起きることがあるということで、接種後15分から30分くらいは様子を見て、アレルギーや特にアナフィラキシーの既往歴のある人は、おそらく接種しないという選択肢もあると思いますが、ご自身でボスミンなどの注射薬をお持ちの方もいらっしゃるかと思うので、様子を見てもらうことで、周りの医師、医療関係者もきちんとフォローできると思います。

2回目の接種の方が痛い、腫れる、辛い、ということがありますので、医療関係者の方は特に、ご自身が打たれる場合、もしくは患者さんで打たれる方が仕事をしていたり、重要な職務に就いている場合には、金曜の夕方であったり、翌日休めるようにすることが、大事になってくるのだと思います。稀な副作用、副反応が想定外で起きることもあります。また、ワクチン接種をしたことがあまりない、私たちから言う“素人さん”が増えます。そうすると、接種事故、いわゆる副反応とは別のことが起きる可能性があるので、接種事業に関わる方は、それに対しての対処も想定の中に入れてくだされば、きちんと対応できる体制が整うのではないかと思います。

Q.2治療中の患者さんの中には、疾患への影響について不安を抱く方も多くいらっしゃいますが、治療中の患者さんのワクチン接種について、お考えをお聞かせください。

子どもたちに打つような生ワクチンなどとは違って、今回のワクチンはウイルスが体の中に入るわけではありません。特に、米ファイザー製と米モデルナ製のワクチンは小さな核酸であるメッセンジャーRNA(mRNA)が入るだけですので、体内でウイルスが増えたり、RNAが増えたりということはありません。生ワクチンやその他のワクチンで禁忌とされている免疫不全の方でも、ワクチン接種が可能ということになります。

今回のワクチンについて、禁忌となる疾患は基本的にないと考えてよいと思います。しかしながら、ワクチン接種に伴う痛み、腫れ、発熱に関して、リスクが生じるような疾患、症状、もしくは不安をお持ちの方は、それがきちんと医療機関に伝わり、ケアされることが必要だと思います。

Q.3妊婦さんや抗がん剤を投与されている方が気を付けるべきことはありますか。

ワクチンも薬ですから、抗がん剤投与の真最中であれば相互作用などで想定外のリスクが生まれることもありえるので、基本的にはそのような時期は避けるのがベストですし、治療の間や退院されていることが接種する条件になると思います。医療機関、自治体によって、それぞれ接種の条件設定をしているかと思いますので、問い合わせていただくのがよいかと思います。

Q.4拡大する変異ウイルスの流行に際して、ワクチン接種の有効性についてお教えください。

まさに情報が錯そうしてインフォデミック(大量の情報が氾濫し、現実社会に影響を及ぼす現象)の状態になっているものの一つだと思います。一点だけはっきりしていることとして、複数の変異株が出ていますが、日本が輸入する3つのワクチンは基本的には有効性ががくっと落ち、効かなくなることはありません。

変異株にはいろいろな発生系があり、度合いや数値は具体的に申し上げにくいですが、中和抗体(ウイルスを中和する作用を有する抗体)の効果が下がってしまう変異株があります。有効性としてはやや下がるリスクはあるのですが、誤解の元として、中和抗体=ワクチンの効果ではないので、中和抗体の効果が下がっても、おそらくまったく問題なく、重症化したり発症したりすることはないと思っていただければと思います。

将来的に変異株が進化していくと、理論的にはワクチンの免疫を回避できる変異株が発生するリスクがあります。その際には、ワクチン接種をしていても感染がもう一段階、上乗せするような形で起きる可能性がありますが、今年、来年のワクチン接種事業にはおそらくそのようなリスクはないと思っています。もし起きたとしても、それに対応するワクチンが製造され、代替されていくと思いますので、そこはご心配なくと言えます。

Q.5いま流通しているワクチンだと2回接種が推奨されますが、2回接種で有効性が高くなるのでしょうか。

2回接種を1回接種にすれば2倍多くの人に打てるということで、イギリスやアメリカでは、急いでワクチンを打たなくてはいけない時は、まずは1回だけ接種して様子をみようという動きがありました。一時、当局から1回接種が推奨された時期もありました。免疫学者やワクチン学者の間で議論になったのですが、やはり今、変異株が流行っていますので、しっかりした免疫を付けるという意味ではおそらく2回接種が必須となり、1回だけの接種はお薦めできません。確実に1回目より2回目の方が、アフィニティ(抗体がウイルスをやっつける能力)が数百倍、数万倍になります。変異株への集団免疫をつくるには、皆さんが2回接種されることが必須になります。

Q.6ワクチン接種したことで安心感を得られる方もいらっしゃるかと思いますが、「接種したから大丈夫」と考えてよいのでしょうか。

特にアメリカなどでワクチン接種事業が進んで、ある程度の人口が接種した後は、マスクをしなくていい、もしくは普通に生活していいというようなことを政府が追認したりしている場合もございます。接種率が100%近くになるには、私たち日本ではおそらく数年かかると思いますので、ワクチンを打った人がマスクを外した時に、ワクチンを打っていない人もマスクを外したがるでしょう。

打ったから、打っていないからでマスクをすることを法的に強制するのも実質的に難しい一方で、マスクをすることでほかの感染症も9割方減っている事実を考えると、通常の生活でマスクをすることがニューノーマルになり、もちろん内輪で会ったり、外で会ったりする時にはマスクをしなくていいいという状況に落ち着くとは思うのですが、マスクをしなくていい世界が来るというのを想像できるのは、まだ先の話ですね。安心というのを、マスクという一言で例えましたが、ワクチンは感染症のための公衆衛生の一翼でしかないので、ほかの公衆衛生の工夫を怠らないようにしていただきたいと思います。

Q.7複数のメーカーのワクチンが出てきます。複数回接種する場合、同じメーカーのワクチンを接種した方がよいのでしょうか。

臨床試験上は、一つのワクチンを2回打つことでしか、臨床の結果は出ていません。基本的には同じメーカーのワクチンを2回打つのがお勧めです。しかし、今後起こると思うのですが、1回だけワクチンを打ったあと、別の地域に引っ越して、その地域では違うワクチンしか手に入らないということもあり得ます。これは世界でもホットな話題なのですが、今まではあってはいけないし、あり得なかった、1回目と2回目で別のメーカーのワクチンを打つということが世界中で起こっていますし、これからも起こります。その時にいいか悪いかは、まったくエビデンスがでていません。

まだ確証はありませんが、1回目と2回目で別の種類のワクチンを打つと、副反応の発生率が少し上がるという情報があります。一方で、昔から、それぞれ別の種類のワクチンを打つと、同じワクチンを2回打つよりも有効率が上がったりすることも知られています。どれを先に打って、どれを後に打たなくてはいけないなどの臨床試験は行われていませんので、その結果が出るまではやはり、何をお勧めするということにはなりません。

Q.8そういった意味では、打ったメーカーを把握するなど、自身で記録することが大事になりますか。

おっしゃる通りです。やはり記録が一番重要で、今、世界中で記録のシステムの混乱が起きています。ワクチンパスポートの議論も盛んに行われています。私から申し上げたいのは、何らかの証拠になるものも含めて、ワクチンを打った記録をご自身できちんと管理していただいて、何かの際にはそれを提出できるという体制を各自が持っていただきたいと思います。ご自身で健康管理をしていただく、というのが一番重要なのではないでしょうか。

Q.9国内での、ワクチン研究の進捗状況についてお教えください。

第一三共のmRNAワクチンに関しては開発から携わっていますので、利益相反を開示いたします。自身が把握しているだけでも、国産ワクチンとして複数の様々なタイプのワクチンの開発が進んでいます。

最初に臨床試験に入ったアンジェスのDNAワクチン、塩野義製薬と国立感染症研究所の不活化ワクチン、KMバイオロジクス社のワクチン、そして第一三共のmRNAワクチンなどが代表的なワクチンになりますが、それ以外にもIDファーマなど、いくつかの会社が臨床試験を開始、または準備しています。世界でいうと、百数十のワクチンが開発、百弱のワクチンが臨床試験をしていて、その中で臨床試験が終わって承認され、世界中に普及しているワクチンとして、ファイザーやアストラゼネカ、モデルナ、欧米のジョンソン・エンド・ジョンソンが有名です。たくさんのワクチンが、インフルエンザワクチンのように季節性ワクチンのようになってくるとすると、どのようなワクチンが世界で、日本で普及していくかは、きちんと見ていかなくてはいけないと思っています。

輸入ワクチンが手に入れば、国産ワクチンは必要ではないという考え方もありますが、一方で、これからパンデミックが起きない保証はないので、国防の観点から、やはり日本の国民を守る公衆衛生の要としては、日本の企業が日本の材料を使って、日本人のためにワクチンを供給できる体制はやはりあった方がいい、今後の安心感につながると考えています。

Q.10第25回日本ワクチン学会学術集会が年末に開催されます。そこでの論点はなんでしょうか。

2021年12月3、4、5日に軽井沢プリンスホテルウエストで開催します。第25回ということで、昔ながらの学会というわけではないのですが、重要なのは、ワクチンは色々なテクノロジーの集まりですので、研究者が大学の先生だけでなく、小児科医を中心とした、ワクチン接種を業務としている医療関係者、ワクチンを製造する企業、そういったテクノロジーの研究をされている方が集まります。

一般の方もご興味のある方は参加できるようになっています。「ポストコロナ時代のワクチン開発・研究」ということで、今、厚生労働省やPMDAの審査行政の関係者、世界からワクチン開発・研究のトップの方々をお呼びし、ワクチンを打った時にどういった事件・事故が起きるのか、その時の対応はどうすべきかなど、これからのワクチン開発・研究はどうなっていくのか、どうすべきかということを真剣に議論したく思っています。

コロナワクチンの開発から接種事業がうまく行っていないというところで、おそらく反省材料、議論する材料はてんこ盛りになると思います。「何をやっているのだ」というお叱りの意見も含め、いろいろなことをうかがえると思っているので、ご興味のある方はぜひ、ご参加いただきたいと思います。

患者さんと、ともに生きる

社会福祉法人賛育会 賛育会病院 髙本 眞一 院長

Q.1「患者さんと、ともに生きる」というお考えについて、髙本院長は患者を「患者さん」と呼び、患者には「がんばりましょう」とお声がけされていることがとても印象的ですが、これは「医師と患者は対等である」というお考えからなのでしょうか。

私が患者さんに「がんばりましょう」とお声がけするのは、病気の治療に対して、患者さんだけががんばるのではなく、私も一緒にがんばりますという意味が込められています。その根底には、患者さんと医師は、命を持った同じ人間であるという考えがあります。

私は、人間の命は本当に素晴らしいものだと思っています。医学でも命を創り出したいと考える研究者はいますが、実現できた人はいません。それがゆえに、キリスト教をはじめ、いろいろな宗教で、いのちは神様から与えられたものだと考えます。私たち人間は、そのような素晴らしい命を持っているという点ではみんな同じで、患者さんと医師は同じ人間ですから、上も下もなく同格だと思っています。

医師は患者さんより、医学の知識は持っていますが、医学で分かっている命に関することは本当に一部でしかありません。例えば、赤ちゃんが生まれる原理についても、最初は精子が卵子の中に入って受精卵ができて、子宮の中で10カ月間育って、人間として生まれてくるわけですが、事実としてそうなるということは理解できても、「なぜそのようなことが起きるのか?」ということについては、実はまだ分かっていません。私たちが持っている命というのは、それくらい神秘的で、とても素晴らしいものです。患者さんと医師は同じ命を持った人間として、互いの命を大切にするということは、とても重要なことだと私は思っています。

そして、命は素晴らしい力を持っています。私たちはこの力をできるだけ有効に使うべきだと思いますが、私は、自分のためだけではなく、他人のためにも使う必要があると思っています。そのような考えから、命を持った人間同士「ともに生きる」という意識を持つことは、非常に大切なことだという考えを持つようになりました。

医療において、「医師が患者の病気を治す」というようなことが昔から言われていますが、私はそうは思いません。病気に関して、医師が知っていることは、命の真理に対してほんの一部で、医師ができることは限られています。では何が病気を治すのかといえば、私は「患者さんの命の力」だと思っています。医師の仕事は、その力が十分に発揮されるように、ガイドすることです。ですから、医師が患者さんのためになる医療を提供するためには、患者さんの命を大切にし、「患者さんと、ともに生きる」ということが非常に大切だと考えるようになりました。

Q.2患者が自分に合った医療を選択するためには、どのような情報を持つといいのでしょうか。

患者さんと医師がともに生きて、本当に患者さんのためになる医療を実現するためには、医師は自分が持っている情報の中で、患者さんのためになるようなもの、患者さんが知りたいと思っているものについては、できるだけ全て伝え、同じ情報を共有すべきだと思います。特に病気に対する治療法は複数あり、治療後の患者さんの状態も変わる場合があるため、患者さんに分るような形で、選択肢を全てお伝えすることは必要だと思います。その上で、最終的に治療法を決めるのは、患者さんだと私は思っています。

Q.3患者は治療を受ける際に、どのような心構えを持てばいいでしょうか。

患者さんが医師を尊敬するというのはありがたいことですけれども、医師が自分よりも立場が上という意識を持ってしまうと、最終的に患者さんのためになる医療を提供することは難しくなります。患者さんと医師が同じ立場で病気という問題を一緒に考えるという意識が非常に大切です。ですから、患者さんも、患者さん自身の情報を医師や看護師をはじめとした医療者にできるだけ全て伝えてほしいと思います。「この薬を飲んだら、こういう結果になった」とか、「最近の身体の状態」とか、「手術の痕はこうなっている」というようなことは、医療者が治療方針を考えるにあたって、非常に有用な情報になります。

患者さんと医師が一緒になって目指すのは、患者さんの思い通りの医療でもなければ、医師の都合を優先した医療でもなく、本当に患者さんのためになる医療です。そのためには、患者さんの考えや病気の状態を正しく知り、医師は複数の選択肢を検討して、患者さんと医師が一緒に考えて、一番いい治療方針を決定する必要があります。ですから患者さんにはぜひ、医師と対等の立場であるという意識を持ってほしいということ、そして、患者さん自身に関する情報はできるだけ医療者に伝えてほしいということをお伝えしたいです。

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