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新型コロナ流行時に喘息入院患者数が減少 米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)学会誌に掲載2020年10月14日
メディカル・データ・ビジョン株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:岩崎博之)の保有する大規模診療データベースを用いた分析で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時、喘息による入院患者数が減少したことが明らかになったので、お知らせします。本研究は、東京大学大学院医学系研究科・公衆衛生学教室の宮脇敦士助教のチームが、当社取締役・中村正樹、および慶應義塾大学医学部医療政策管理学教室・二宮英樹(株式会社データック代表取締役兼CEO、医師兼任)と共同で行いました。本研究の論文は10月13日付で米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)の公式学会誌である、The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice に掲載されました。
気管や肺に感染するウイルスは一般に喘息を悪化させることが知られています。COVID-19も同様に喘息のコントロールを増悪させると考えられ、医療関係者の間では、COVID-19流行当初、喘息の入院患者数が増加する可能性が危惧されていました。ただ、その後の欧米の報告では、喘息による救急外来受診者数や入院患者数が逆に減少したという報告も出てきていました。しかしながら、これらの報告は、小規模な研究であり、この傾向が他の地域でも当てはまるかどうか、大規模なデータベースを使用した研究が待たれていました。そこで、本研究では、当社の保有する大規模診療データベースを用い、2017年1月〜2020年5月の喘息を主病名(最も医療資源を投入した病名)に持つ入院患者数の週毎の推移が継続的に観察できた全国272のDPC病院を対象に調べました。
その結果、例年春先(第9週=3月上旬以降)から初夏にかけて、喘息の入院患者数は増加する傾向にあるにもかかわらず、今年は逆に減少する傾向であったことが認められました(図)。年と週によるトレンドを統計学的に調整した分析では、2020年第9週以降の喘息による平均入院患者数は、2017年から2019年の同時期と比較して0.45倍(95%信頼区間 0.37-0.55; p<0.001)になっていました。この傾向は18歳未満の子ども、成人共に認められました。
COVID-19の流行自体が喘息のコントロールを悪化させた可能性は残りますが、それ以上に感染症の予防行動やマスク着用によるアレルゲン(花粉など)への暴露の減少などが、社会全体でみたときに喘息発作を低減させたと考えられます。本研究において認められた劇的な喘息による入院患者数の減少は、個人や社会が生活様式を変えるだけで喘息による入院の大部分を防げる可能性があることを示唆しています。喘息の良好なコントロールのために、予防行動や生活環境への配慮の重要性が再認識させられます。
【書誌情報】Abe, K., Miyawaki, A.*, Nakamura, M., Ninomiya, H., Kobayashi, Y. (2020) Trends in Hospitalizations for Asthma During the COVID-19 Outbreak in Japan. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice
URL:https://doi.org/10.1016/j.jaip.2020.09.060
*Corresponding Author
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